ささめきこと 第7話 「少年少女」

ささめきこと 2012/06/11 20:32


ふーいいよぉ。ちょっと足崩して。そう…じゃあ次は、軽く胸チラする感じで…。
「万奈歌、小学生が胸チラなんて言葉、使っちゃダメだよ…。」
うほっ!その顔、そそるわよぉ!お兄ちゃん!


こんなそそる写真を撮っているのは、朱宮くんの妹・朱宮 万奈歌(あけみや まなか)ちゃん。モデルの“アケミちゃん”を誕生させた張本人である。


万奈歌「うう~、この恥じらいっぷりが何とも…今回もランク入り間違いなしよ、お兄ちゃん。」
アケミちゃん「こんな格好で人気なんか出たって、嬉しくないよ。」
万奈歌「な~に言ってんの、これは朱宮正樹じゃなくて、モデルの山崎アケミちゃんのホームページなんだから。いっぱいサービスして人気取らないと~!」
アケミちゃん「僕は別に、そんなこと…。」
万奈歌「ま~だそんなこと言っとるのか~!」


すると、万奈歌はお兄ちゃんをベッドに押し倒し…!


アケミちゃん「ま、万奈歌?」
万奈歌「お兄ちゃんたら、男のくせに意気地がないんだから。もったいないじゃない。こ~んなに可愛いのに。」
アケミちゃん「まな…。」
万奈歌「色は白いし肌はスベスベ。メイクなんかしなくたって、充分女の子で通るわよ。あ~いい匂い…。
アケミちゃん「や、やめ…。」
万奈歌「“本当に女の子なら良かった”な~んて思ってるんじゃない?」
アケミちゃん「……ダメだよ。もし僕が本当に女の子だったとしても…。」


どうも万奈歌ちゃん、こんな可愛いお兄ちゃんに、兄以上の感情を抱いているらしい…?
その気持ちはすんご~~~~く、わかります!

そんな万奈歌ちゃんが、朱宮くんの高校に乗り込んできた。純夏に言いたいことがあるらしい。
万奈歌「アンタさぁ、お兄ちゃんのこと振ったんだって?」
純夏「あ~、そういえば…確かに振りました、はい。」
万奈歌「おっかしいんじゃないの?アンタ、可愛い女の子が好きなんでしょ?ウチのお兄ちゃん、あんなに可愛いのに、どうして好きになんないのよ!

‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥

純夏「ん?待って?ちょっと待って?自信満々だったけど、今の100%間違っ…。」
万奈歌「ま、いいわ。確かにあんまり可愛くて億劫しちゃうことはあるかもね。かくゆう私も、肉親ながらもたま~に辛抱たまらん時が…!」
純夏「えーと、どこから解こうか、その誤解…。」
万奈歌「だからチャンスをあげるわ!次の日曜、お兄ちゃんとデートしなさい!」
純夏「はぁ?なんであたしがそんな…。」


万奈歌「断ったら、お兄ちゃんの恥ずかしい写真を世界中にバラ撒いちゃうから!
純夏「知らんわー!ボケー!」
万奈歌「いいの?アンタのせいでお兄ちゃん、大変なことになっちゃうわよ!世界中の変態さんが我も我もと押し寄せて…!」

このあまりの万奈歌ちゃんのわがままに、朱宮くんもとうとう「人に迷惑かけるな」と怒った。
しかし、「お兄ちゃんのために一生懸命やってるのに~!」と泣かれてしまい、純夏はデートしてあげることに。

純夏「あたしも、ダメな兄貴持つ妹の気持ちはわかるからさ。」
朱宮くん「あ、そうですか…。」
万奈歌「計 算 通 り。

そして日曜日。
純夏「妙なことになったなぁ…。考えたらあたし、男の子とデートなんて初めてだ。」
アケミちゃん「村雨さーん。すみません、待ちました?」

純夏「えっ、ああ、朱宮くんか…。」
アケミちゃん「つけ毛にしてたら遅れちゃって。手軽にイメチェンできて便利ですよ。村雨さんもどうですか?」
純夏「ああ、いや、あたしはそもそも…って!なんで女装だよ!

アケミちゃん「む、村雨さん的には、こっちの方がいいかと…。」
純夏「ホントに?あたしのため?実は好きなんじゃないの?女装が。」
アケミちゃん「あ、あはははは…。そんな…。」

いよいよデートが始まる、が、その背後にはお兄ちゃんを観察しようと万奈歌ちゃんの姿が!
まずは映画。万奈歌ちゃんが用意した恋愛映画(R-15)のチケットで、お兄ちゃんの可愛いところを!


(万奈歌の妄想上のアケミちゃん)「えへ、ちょっと泣いちゃった…。

うっひょぉ!思わず鼻血も出ちゃいます。

ところが、その恋愛映画に気乗りしない2人。ちょうどホラー映画のチケットを持っていて「恋愛映画がいい」と言っているカップルがいたので取り替えてもらい、作戦は失敗に。ええい次だ、次ィ!次は喫茶店!


純夏「ここも妹さんの?」
アケミちゃん「はい、オススメらしいです。」
純夏「そういや、モデルやる羽目になったのも妹さんのせいだっけ?」
アケミちゃん「えへへ、ええまぁ…悪い子じゃないんですよ。僕の事で一生懸命になってくれるのは兄として嬉しいですし…あれ?開かない…」

と力を入れた瞬間、ミルクが勢い良くアケミちゃんめがけて飛び出した!飛び出してしまったぁ!


アケミちゃん「キャッ!


アケミちゃん「あぁ…、かかっちゃった…。


ペロッ


純夏「ゴクッ…。」

純夏「つか!今!お前!キャッ!つったな!キャッ!って!!」
アケミちゃん「だって、今は女の子なわけだし…。」
純夏「ホントか?本当にそれだけか?」


アケミちゃん「……すいません。」

アケミちゃん「…?どうしたんですか?」
純夏「んー、軽く頭痛がねー。」

続いてはファッションモールへ。落ち着かない様子の純夏とは違い、アケミちゃんは慣れた手つきで服をみている。


純夏「妹さんのオススメってさ、女の子向けスポットばっかだねー、朱宮くん、なんかオモチャにされてない?」
アケミちゃん「兄と妹って、大きくなると疎遠になるって言うじゃないですか。万奈歌も、今は懐いててくれるけど、そのうちキモイとかウザイとか言い出すんですよね。そうなる前に、できるだけ仲良くしておきたいから…。エヘヘ…。ちょっと妙な格好するくらい、何でもありませんよ。」
純夏「そういや、私も兄貴と…。」
アケミちゃん「あっ!これ可愛い!
純夏「………。」
アケミちゃん「一般論として…。」
純夏「あー、うん、そうだねー」

すると店員がやってきて、「試着しますか?」と言われるがままに試着室へ。
しかも試着室が空いてないからと2人同じところに入れられてしまう。

アケミちゃん「えーっと、せっかくだから着てみましょうか。」
純夏「なんでだよ!」
アケミちゃん「あっ僕、仕事で女の子の着替え見慣れてますから、お気になさらず…。」
純夏「あたしが嫌だよ!」

純夏「ていうか、あんた、モデル仲間での扱いはどうなってんの?」
アケミちゃん「完璧、愛玩動物ですね。微塵も男扱いされてませんよ。」

と言いながら、服を脱いでいくアケミちゃん。
純夏「…って!ホントに着替えんなよ!」


アケミちゃん「やだ、村雨さん、だからってそんなにジロジロ見られたら、僕…。
純夏「あああああああ…!」


アケミちゃん「あ…あん…。
純夏「シナをつくるなー!」
アケミちゃん「これは地ですー!」


着替え終わった朱宮くん。可愛い…。そして店員とのトークも慣れている。
一方それに馴染めない純夏。そんな自分が嫌になり、思わず店を飛び出してしまう。

純夏「神様のバカ、バカー!男を可愛くするヒマがあるんなら、あたしをなんとかしてくれてもいいじゃんかー!」

すると純夏は何やら肉の塊にぶつかった。

ぶつかったのは、カメラを持って「カワユス…カワユス…」と言いながら近寄ってくる3人組。
この3人組も万奈歌ちゃんが用意したもので、通称「キモイ三連星」。


純夏の家は空手道場。純夏もその腕前を生かして三連星の攻撃を跳ね返そうとするが、3人いっせいにこられるとつらい。なんせフラッシュを光らせ写真を撮ってくるわ、「俺を踏み台にしてぇ~」と純夏の足に顔をスリスリしてくるわ、本当にキモイ三連星なのだ。

そこにアケミちゃんが追いつく。
アケミちゃん「あれは…!絡まれる女子を助ける伝説のフラグイベント!しかも、相手は不良じゃなくカメコさん!」

アケミちゃん「まさに、僕のターン!行くぞっ!」


アケミちゃん「そんな乱暴な子より、ね…。

そう言ってアケミちゃんは三連星を誘い、純夏から離すことに成功。だが…。


アケミちゃん「じゃじゃーん。実は女の子じゃありませんでしたー。あははは、ごめんなさいねー。

アケミちゃん「あれ…?」
三連星「それはそれで…!

アケミちゃん「え?」
三連星1「そもそもこんな可愛い子が女の子なわけがない!
三連星2「おーっと!オラテカスイッチ入った!」
三連星3「おっぱいなんて飾りです!偉い人にはそれがわからんのです!」
アケミちゃん「ヒィィィィ、い~~やぁ~~~~!」

さすがキモイ三連星、よくわかってるじゃないか…って言ってる場合じゃない、助けないと!


万奈歌「どう?お兄ちゃんの可愛さのおかげでアンタは助かったのよ。惚れたでしょ?」
純夏「いや、アレは助けんでいいのか…?」

その帰り道――
万奈歌「待ってよお兄ちゃん。ねえ、悪かったってば。」

朱宮くん「もう、あんなことしちゃダメだぞ。」
万奈歌「うん。」
朱宮くん「村雨さんが空手やってなかったら、どうなってたか…」
万奈歌「あんな乱暴な女、お兄ちゃんには似合わないわよ!」
朱宮くん「………(ムスッとした感じ)」
万奈歌「お、怒んないでよ~。」

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