乙女はお姉さまに恋してる 第8話 「縮まらない記録(タイム)」

乙女はお姉さまに恋してる , 2012/08/10 0:26


陸上部はもうすぐ、大会に出る選手を選ぶ代表選考会。由佳里ちゃんも今それに向け猛練習中。
陸上部の先輩であるまりや(3年生ですでに引退)も、寮のみんなも期待しているが、どうもその表情は暗い…。


一方、演劇部所属の奏ちゃん。なんと部長直々の推薦で、主役に抜擢された。
演劇部員なのにあがり症な奏ちゃんですが、部長らの指導を受けながら頑張って練習中。大変だけど充実しているという感じ。


まりやが陸上部の先生に聞いたところ、由佳里ちゃんはタイムも伸び悩んでいて、選考会も危うい状況らしい。
まりや「自信なくしちゃってるのかも…。」
一子「自信、ですか…。」
まりや「でも、コンマ何秒を競う陸上ではよくあることなのよ。そこをどう乗り切るかがポイントなんだけどね…。」

次の日の授業中。

瑞穂「自信か…」
貴子「何かおっしゃいましたか?お姉さま。」
瑞穂「えっ、あ、貴子さん。別にそのなんというか…貴子さんは自信がなくなる時なんてありますか?」
貴子「は?」
瑞穂「あ~ごめんなさい。突然変なことを聞いてしまって。」
貴子「自信なんて、いつもありませんわ。」
瑞穂「えっ?だ、だって、そんな風には…。」
貴子「そう努めていますから。上に立つ者が不安気では、誰もついてきませんわ。自分の決定には迷わない、そのように努めているだけですわ。」


瑞穂「そう…だったんですか。」
貴子「“不安のかけらもない鉄の女”そんな風に見えましたか?」
瑞穂「あっ…あ、いえ…。貴子さんは、マジメなんですね。」
貴子「えっ…(顔を赤らめて)んん…」
瑞穂「(意外だなぁ。そっか、きっと由佳里ちゃんもマジメすぎるのよね、だから…。)」

アイキャッチ

瑞穂ちゃんは由佳里ちゃんをお茶に誘い、話を聞く。


由佳里ちゃんには義理の姉がいて、そのお姉さんも聖應に通っていた。陸上部に入って長距離をやっているのもお姉さんに憧れてのこと。でも由佳里ちゃんは本来短距離向きだとまりやは言っている。
そのお姉さんは綺麗でとても上品でいつも優しく微笑んで、瑞穂ちゃんに少し似ていたという。


奏「せっかく生まれてきたのよ!自分の心のままに生きたいわ!」
瑞穂「あっそう!あんたといると、こっちが恥ずかしくなってくるぜぃ!
奏「悪かったわね!人間そう簡単に変われませんよーだ!」

これは、奏ちゃんの劇の練習。すっかり女生活に慣れきってる瑞穂ちゃんの男言葉が逆に新鮮。
まりや「奏ちゃん上手じゃない!」
紫苑「とっても良かったですよ。」
奏「そ、そうでしょうか…でもでも、今のはお姉さまが、相手をして下さったからなのですよ~。」
瑞穂「そんなことないわ、これも奏ちゃんの実力よ。」

そんな奏ちゃんの練習を見て、ますます由佳里ちゃんは落ち込んでゆく。演劇で主役の奏ちゃん、お姉さまもすごい人ばかりなのに自分は…。
お姉さんを追いかけて陸上部に入ったけど、本当に私は陸上が好きなのか…?

そしてとうとう由佳里ちゃんは朝練もサボってしまう。
練習を影から見ている由佳里ちゃんに、瑞穂ちゃんは声をかける。

瑞穂「一緒に走らないの?」
由佳里「瑞穂お姉さま…。」
瑞穂「ちょっと、歩きましょうか。」


由佳里「気付いちゃったんです。本当の私は、自分で思ってたほど、陸上に一生懸命じゃないのかもしれないって…。」
瑞穂「ねえ由佳里ちゃん、私思うの。無理にお姉さんを追いかけなくてもいいんじゃないかって。」
由佳里「あっ…。」
瑞穂「由佳里ちゃんは、お姉さんをずっと追いかけてきて、でも今は迷っている。」
由佳里「ずっとなりたかった…お姉さんみたいに。でも頑張っても、どんなに頑張ってもうまくいかなくて、せっかくここに入れてくれたお姉さんに、申し訳なくて…中途半端な自分自身が嫌で…!」


瑞穂「私ね、ずっと父に、髪を切らせてもらえなかったの。
由佳里「えっ!?」
瑞穂「私の母は、もう亡くなったんだけど、死ぬ前に父に頼んだらしいの。私の髪を切らせないで欲しいって。父はその言葉を守り続けた。私も短くしたかったけど、我慢したわ。今の由佳里ちゃんと一緒。そうしなければ、亡くなった人への誠意や愛情を示せないと思ってしまうのね。」


瑞穂「でもね、母が私に髪を切らせなかったのは、私が大きくなった時に、自分の好きな髪型を選ばせるためだったの。自分で自分の道を選べるようにって…。だから切っても構わなかったの。」
由佳里「えっ!だ、ダメですよ!お姉さまには長い髪がとってもお似合いですのに!」
瑞穂「ええ、切らないわ。これのおかげで、みんなと出会えたんですもの。これは私の意思。自分で決めたの。何が自分に一番似合うことか、考えてね。」
由佳里「自分に一番似合うこと…。」
瑞穂「お姉さんも同じじゃないのかな、由佳里ちゃんを縛るためじゃなく、いろんな道を選んでもらうために、この聖應を勧めた。由佳里ちゃんに、幸せを見つけて欲しかったから。」

つまりセミロングやショートカット瑞穂ちゃんの可能性もあったと…(女装しないという選択肢は考えない)

こうして由佳里ちゃんは自分で考えて、陸上を続けることを決めた。

瑞穂「さぁ、一緒に走りましょう、由佳里ちゃん!」
由佳里「はっ、はい!」

乙女はお姉さまに恋してる , 2012/08/10 0:26
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