乙女はお姉さまに恋してる 第2話 「けせない消しゴム」
翌朝、すっかり評判の瑞穂お姉さま。「ごきげんよう」と笑顔で挨拶を交わす。
瑞穂「ふぅ、昨日より注目度が増しているのは気のせいなのかな…笑いすぎて顔が痛いや。なんか疲れた…。はぁ~。」
「まぁ、随分と深い溜息をつかれてますのね。」
振り向くと、そこには昨日出会った美しい方。この方は十条紫苑さんという。
紫苑「いかがかしら?聖應においでになってみて。慣れることはおできになりそう?」
瑞穂「正直なところ、このようなお嬢様の学校に接するのは初めてなので、面を食らって…あ~いえっ、戸惑いまして…。」
紫苑「うふふ、無理をなさらず、わからないことがあったら何でもお聞きくださいね。」
「なんで品の良い人なんだろう。本物のお嬢様って感じだよな…。」
と思いながら瑞穂ちゃんは筆箱を開けると、そこには入れた覚えのないキリンの形をした可愛い消しゴム。まりやの仕業だ。
瑞穂「なんじゃこりゃあぁぁ!」
戸惑っている瑞穂ちゃんに、紫苑様は消しゴムを交換しましょうと言ってきた。
瑞穂「でもそれは、紫苑さんがお使いになるでしょう?困るんじゃ…。」
紫苑「今使っているものが、今日くらいは持つと思いますから、よろしければどうぞ。」
瑞穂「あ、ありがとうございます。」
紫苑「これはお近づきの印に、大切にいたしますわね。」
今日もトイレでドキマギの瑞穂ちゃん。トイレに入ったら大急ぎで個室に駆け込む。
瑞穂「ハァ、ハァ、ハァ…やっぱり緊張するなぁ…」
なんとか入れたはいいものの、目の前にはやっぱりこの便器。
瑞穂「はぁ、万が一のこともあるからな…これからはずっと座ってするのか…トホホ。」
用を済ませて個室から出ると、トイレには紫苑様が。
紫苑「ごきげんよう。」
瑞穂「ごきげんよう。」
紫苑「あの…、ズボンのチャック開いてらしてよ。」
瑞穂「すっ、すみません! …あっ?」
もちろんズボンじゃないし、チャックなんてあるわけない。これは罠…!
紫苑「少々付き合って頂けますかしら?宮小路瑞穂さん。」
紫苑「失礼ですけど瑞穂さん、ひょっとしてあなた、男性の方ですか?」
瑞穂「うわっ!?あの…え~その、あ…そ、そんなはずが…。」
紫苑「そうよね、聞かれたからと言って、答えられるものではないわね。でもごめんなさい、今の返事でわかってしまったから。」
なんとするどい人…!そこにまりやもやってきた。まりやに助けを求める瑞穂ちゃん。
紫苑「ご安心なさって。秘密にしますから。どのような理由かわからないけど、瑞穂さんは悪い方のように見えないわ。せっかく素敵なお友達になれそうですのに、水を差すのは無粋というものでしょう?」
瑞穂「はぁ、良かった…。」
紫苑「お2人はお知り合い?」
瑞穂「え、ええ、幼馴染ですけど…。」
まりや「というより、私は瑞穂ちゃんの下僕同然なのです!」
瑞穂「え?まりや?」
まりや「それはそれは毎晩恥ずかしい目に…!」
瑞穂「は?何を…?」
紫苑「わかりますわ!わたくしも先程散々なぶり者にされてしまいましたから…!」
まりや「まぁ!瑞穂ちゃんたら紫苑様まで?」
紫苑「このことをバラされたくなければおとなしく言うことを聞けと、あられもない姿の写真まで撮られてしまって、もう逃げられないのです!」
まりや「ああ、おいたわしや紫苑様…」
紫苑「瑞穂さんって…」
まりや「純情そうな顔して…」
紫苑&まりや「実は極悪人だったのですね…。」
というのはもちろん冗談ですが…紫苑様もけっこうノリが良いのですね。
まりや「ところで紫苑様、(瑞穂ちゃんを)どう思われます?」
紫苑「いいのではないかしら。いえ、とっても素敵なことかもしれなくてよ。」
まりや「うふふ、紫苑様もそう思われます?
紫苑&まりや「うふふ、うふふふ…」
瑞穂「いったい何なの!?」
そんな紫苑様のおかげか、瑞穂ちゃんもお嬢様生活が板についてきた様子。
まりや「瑞穂ちゃん元々素質はあると思ったけど、やっぱり紫苑様のようなお手本がそばにいると違うのね。ここ数日で女の子として、目覚しい進歩を遂げてるわよ。」
瑞穂「なんのことかしら?」
まりや「ほら、そこでボロが出ないから大したものよ。」
でも、ここだけはやっぱり弱い…?更衣室でお着替え。
ボロを出さないようにとまりやに言われたのに、ついつい見てしまう瑞穂ちゃん。
まりや「紫苑様、これはちょっとお仕置きが必要ですわね!」
紫苑「うふっ、そのようですわね。」
瑞穂「うわぁぁ!まりや…さん?突然何をなさるの~」
まりや「ええい悔しい!こんな立派な胸をしておいて、まだ他の胸に興味があるか!」
紫苑「まあ、本物みたいですわね。柔らかいしそれにちょっと暖かい。これって、瑞穂さんには何にも感じられませんの?」
瑞穂「一応、密着されていますから、圧迫されてますけど…」
紫苑「楽しいわね、なんだかクセになってしまいそう。」
まりや「これってある意味女子校っぽいわよねそれ、もにゅもにゅ~!」
瑞穂「ああ、やだ、変な感じ~!やめてえええぇぇぇぇ!」
体育の授業はバスケットボール。瑞穂ちゃんはブルマじゃないのね…。
それはともかく、ここでも女の子らしくしないと…でもついついさっきのことも思い出しちゃったり…。
そうしていると、「瑞穂さんお願い!」と声がかかった。
瑞穂ちゃんはボールを受け取ると、颯爽とドリブルをしながら走って、女子たちを飛び越えて軽やかにシュート!
瑞穂「し、し、し、しまったー!」
うっかり本気を出してしまった…ところが…。
「キャーーーーッ!」
「なんて凛々しいお姿!」
「かっこいいですわ!」
容姿端麗・成績優秀の上スポーツも万能と、さらに人気に火がついてしまったのだった。
そしてついに、瑞穂ちゃんがエルダーになるという噂が流れ始める。
エルダーとは「エルダーシスター」、一番上のお姉さまという意味で、毎年全生徒から慕われるお手本となるお姉さまを選出するというもの。
「そんな大それたことをとんでもない…!」と焦る瑞穂ちゃん。
それより紫苑様の方がふさわしい、紫苑様に票を入れたいと言うと、なぜか紫苑様の表情が曇る。
実は紫苑様は留年していて、去年のエルダーだった。しかしエルダー選出後すぐに病気で長期間休んでしまい、実質エルダーの座を空席にしてしまったという。だからそんな資格はないと…。
瑞穂ちゃんがエルダーにという話が出たのも、そんな紫苑様に認められた人だからということもあるのだ。
しかし、そんな瑞穂ちゃんを良く思わない人もいた。
生徒会長の厳島貴子。まりやとは幼馴染にして犬猿の仲。
貴子「彼女はまだ学院の右も左もわからない、転入されたばかりの方なのですよ?」
まりや「とは申されましても、それを理由に一生徒の権利を剥奪するなんて権限は生徒会長にはありません。」
伝統を受け継ぐべきのエルダーに瑞穂ちゃんがなることは認めないとする貴子。
瑞穂ちゃんがいなければ自分が最有力候補であったということもあるが、まりやが応援しているというのも気に入らない感じだ。果たしてどうなる?
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