ブルーピリオド 第10話 「俺たちの青い色」 セルフヌードで自分をさらけ出す…!
夜、ふと電車に飛び乗ってしまった2人。
意外にも八虎が乗ってきたことにユカちゃんは動揺する。
龍二「あさってだろ?2次試験…らしくないよ。今の時期の1枚がどれほど…。」
八虎「お前が言ったんだろ、海に行こうって。まあ一応クロッキー用紙と簡単な画材は持ってんだ。その気になればどこでも描ける。つぅか冬の海って心中かよ。一体何しに…。」
龍二「別に理由なんてないわ。この電車で行けるいちばん遠い所ってだけ。」
いい脚だし、女言葉が良い。セクシーで…。
龍二「でも安心したよ。いつでも画材持ち歩いてるなんてさすがだね。」
八虎「別に。手動かしてないと怖いだけだよ。」
八虎「《だけどだったら家に帰って描いた方が…自分でもどうかしてると思う》」
龍二「肌出てるとこ風が吹く度にどうにかなりそうだ。早くどっか入ろう。」
八虎「はあ?泊まるとこ考えてないの?」
龍二「ネカフェでよくねぇ?」
八虎「あさっての試験、体もたねぇわ!」
八虎「いやいやいやいや!!」
龍二「八虎君はウブだなぁ。」
八虎「お前とはなんか嫌なの!」
あくまで予約内容を確認しただけなんだろうけど…ドキドキしますね。
八虎は眠っている。
龍二「《そりゃ疲れるよな、予備校で毎日何時間も描いて試験はあさって…》」
龍二「傷になるよ。」
八虎「あっ、ああ…。」
龍二「じんましんだよな、それ。」
八虎「情けない話1次んときからずっと出てんだよな。たぶんストレス?みたいな。」
八虎「なあ龍二。何があったか教えてくんねぇの?家に帰らないってなんかあったんだろ?」
八虎「えっ…マ…ジで?」
龍二「結構いるけどね、こういう人。」
龍二「海の音っていいね。落ち着く。」
八虎「俺はちょっと怖いよ、海の音。何もかもなかったことになりそうじゃん。」
龍二「そうだね~。」
素泊まりにも関わらず、多めに作ったからと朝食を出してくれたご主人。
八虎「うわ~すいません!ありがとうございます!」
館主「小田原は海のものが本当においしいから。」
龍二「うちには連絡したの?」
八虎「ああ、昨日の夜な。本当のことを話したら母さんぶっ倒れるから友達の家に泊まったことにした。チェックアウトまで3時間か~意外と長ぇな。」
龍二「画材持ってきたんだろ?」
八虎「海でも描くか。」
龍二「俺ももう一度海見てこよっかな~。」
八虎「なあ、昨日言ってた『まだ死なない』ってどういう意味?」
龍二「中学の頃、友達に『死にたい』ってぼやいたことがあってさ。そしたらね『じゃあ裸になって死になよ』って。」
八虎「何それ、恥ずいじゃん。」
龍二「『恥ずかしいと思うなら…どう見られてもいいと思えないならまだ死んじゃダメだよ』ってね。」
八虎「あっ。」
龍二「だから~、私はまだ死ねないの。」
龍二「八虎、自分の裸を描いたことある?」
八虎「あっ…、ないけど。」
龍二「描いてみたら?少なくとも海を描くよりは発見があると思うけど。」
八虎「じゃあお前も描けよ。」
龍二「描けないよ。」
八虎「部屋仕切ればいいだろ。俺も見られたくないし。」
八虎「くぅ~寒っ!《冷静になったら小田原まで来てすっぽんぽんって…》」
八虎「《あれ?何万回も見てきたはずなのに…俺の体、毛の生えた薄手のゴムみたいで…俺が想像してたより情けないな…》」
八虎「なあ、怒んなよ。」
龍二「何が?」
八虎「日本画の子に龍二の絵見せてもらったんだけどさ…。」
龍二「ああ~…誰か分かった。」
八虎「デッサンの絵より、服の絵の方が全然いいじゃん。ムカつくけど…なんで日本画やってたわけ?」
龍二「祖母が日本画を好きだったから。」
八虎「おい…本当にそれだけで進路決めたらやばいだろ。」
龍二「ふっ…やばいでしょ?」
龍二「うち、親は酷いけど祖母だけは俺の味方だったの。それに祖母の家に間借りしてるから両親は頭上がらなくてね。俺は純粋に祖母が好きだったし、絵を描く楽しさも祖母に教えてもらって…。俺は日本画家になりたいとか思ってたんだよ。」
龍二「でも、受験勉強し始めた頃から日本画描くのが辛くなってきて…。」
龍二「日本画をやりたいって言えば進路のことは親に黙認されてたし、あの家で本当は祖母も弱者だったから。」
龍二「佐伯先生にも相談したけど、結局自分が何したいかわかってないから八つ当たりになっちゃって…こんな気持ちじゃうまくなるわけもなく…。」
龍二「八虎みたいに、腹を決めて死ぬほど努力してる人にはかなわないんだ。」
八虎「う~ん…努力っつぅと聞こえはいいけどやってないと怖いだけなんだよマジで。センスも才能もないからやってないことはできないし。俺くらいやれば多分大抵の人間俺よりできるようになるんじゃねぇ?」
龍二「意外と人間なんだな八虎も。」
八虎「で、家がどうしたんだっけ?」
龍二「親に部屋のもの捨てられたとき、絶望したけどほんとは安心したんだ。家から逃げていい口実が出来たから。」
龍二「でも祖母がすぐにゴミ捨て場から俺の荷物を取ってきてくれて。」
八虎「お前って、他人がどう思うか気にしないタイプなのかと思ってたわ。」
龍二「はははっ…人の目ばっかり気にしてるよ。」
龍二「俺の“好き”だけが、俺のことを守ってくれるんだと思ってるけど、自分が何が好きなのかさえ時々わからなくなる。」
八虎「さっき言ってた中学の友達?」
龍二「…もっと驚けよ。」
八虎「ああ…でも前に男に告ってなかったっけ?」
龍二「男の魅力も知ってる。でもこんな格好してるし、男だけが好きなら分かりやすかったのにね…。」
八虎「最近一人称が“私”だったのもわかりやすいから?」
龍二「あっ…。」
八虎「でもそれって理解じゃなくてカテゴライズだよな。俺もぶっちゃけお前のこと女装男子って思ってたけど、今はほら違うし…。」
八虎「でも俺も、自分で勝手にキャラ作りしちゃう気持ち分かるな…。」
八虎「《こいつとこんな話をするなんてどうかしてる…きっと海の青さに染まったからだ…。》」
龍二「一緒に来てくれてありがとう。」
八虎「んっ…どうも。」
龍二「あんな真っ青な体にじんましんは似合わないからね。」
八虎「くっ…俺やっぱお前のこと苦手だわ!」
八虎「まあ、落ちたら俺のせい。受かったら俺のおかげ。それだけだろ。」
龍二「《俺は、逃げるべき場所と戦うべき場所をずっと間違えてたのか…でも君は正面からずっと戦ってきた。》」
<帰りの電車内の回想>
龍二「進路?とりあえず家を出るよ。それで服を作る仕事する。」
龍二「裸も、裸を飾ろうとする人間の自由さも醜さも、全ていとおしいじゃない?」
自分の裸を見せ合い、ありのままを認めることで、ユカちゃんも八虎も一つ前に進んだようです。
エンディング
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